オランダという国は、世界のポップス音楽シーンの中ではさして目立つ国ではない。(アバっていう女性グループはオランダ出身だったかな?スウェーデンか?)でも、ここアムステルダムは、若者たちによる音楽活動が非常にさかんな町なのである。まずは、ヨーロッパの国々でよく目にする街頭パフォーマンス。大道芸ってやつだな。アムス市内にはなんとかリークスと名前のついた広場がたくさんあって、そうした場所では多くのグループや個人が様々な楽器編成で音楽を演奏している。生ギターの弾き語りもいれば、パーカッションと踊りのグループ、大編成のロックバンドなどいろいろ。地下道とか駅の構内など響きの良い所にはクラシック関係のミュージシャンが多い。電気楽器を使う連中は小さな手押し車(スッチーがトランク運ぶのに使うヤツな。)に電池で鳴るギターアンプをくくりつけて使ってる。中には本格的なP.A.セットを組んでるバンドもいる。
なかでも、一人でリズムボックスを伴奏にエレキギターを弾いて唄ってたねーちゃんが、さいこーだった。ロックしてたぜ。他のお気に入りは、黒人のパーカッション軍団を混じえた大人数のファンクバンド。なかなかのオリジナリティがあったな。私が思うにイギリスを別とすれば、ヨーロッパの中では、オランダとドイツのロック、ポップスのレベルは大変高いと思うよ。その割には、あまり日本には、彼等の音楽は入ってこないな。まだ日本では、ロック、ポップス音楽の文化的な歴史が浅いせいで、一般的には音楽がファッションとしてしか捉えられてないという感じがするな。だから、一部のプロモーション上手な音楽だけがヒットして、マイナーでも素晴しい音楽の存在は気付かれにくいということか。インターネットの出現で、コムロな音楽だけでなく、もっと音楽の楽しみ方が多様化することを、強く期待するね。
アムスにはライブハウスも多く、出演バンドのグレードはかなり高い。日本料理屋のバイトは、仕事が終わるのが遅くて夜中の12時ごろになってしまうので、それからライブハウスに行っても、たいていラストの30分ぐらいしか聞けなかったのが残念だ。
あまり日本には無いタイプのライブハウスを見つけた。そこはジャムセッション専用のライブハウスで、一通りの楽器やアンプが用意されており、入場料を払えば聴くだけでも良いし、適当に俺にもやらせろと乱入OKというシステムになっていて、エンドレスに音楽が続いてゆく。
全てのレコードが店内に備えられた多数のオーディオセットで試聴可能という、すばらしいレコード屋を発見する。香港のコンピュータソフト違法コピー販売店より、うれしい。作曲をする者としては、CDのレンタル屋が全部こうなればいいのになと思ったりする。
アムステルダム市警察のすぐ裏手には、昔のオペラハウスの建物を利用した、国営の一大エンターテインメント施設がある。ミルキーウェイというこの施設には、コンサートホール、映画館、ヴィデオルーム、芝居小屋、バー、レストラン、マジックケーキや大麻、喫煙具などを売る売店などが収められている。そんなに高くはない入場料さえ払えば、中の施設はすべて出入りが自由である。私は特にヴィデオルームによく通った。あまり日本では観る機会のない、ドイツのバンドの音楽ビデオがたくさん観られる。また、ここの映画館で観た「ドクトル・マブゼ」という昔のドイツ映画(たしか「メトロポリス」の監督の作品だ)がとてもおもしろかったのが、記憶に残っている。始まりの部分を見逃したので、帰国後の現在、もう一度これを観たいと思っているのだが、どうやらこの作品も日本には入っていないらしく、その願いは今だにかなえられていない。(その後、インターネットのテレビ電話会議システム、CU-SeeMeで知り合った、ChicagoのMushという友達がレンタルヴィデオをコピーして送ってくれ、やっと見ることができたのだ。ありがとう、Mush! )
インドにいた時、私は短波のラジオ放送をよく聞いた。日本だと、ちゃんとしたアンテナをたてない限り、ソ連と北朝鮮のプロパガンダ放送の電波が強すぎるために、もっと遠い国の放送を受信するのは難しい。インドでは中国、中央アジア、中近東、ヨーロッパの放送が簡単に受信できて、なかなか楽しかったものである。
アムスにいる間は、FM放送を楽しんだ。FMチューナーを手に入れて、持っていたステレオウォークマンに継ぎ、ワーテルロー広場のフリーマーケットで手に入れた裸スピーカーを接続して、スピーカーの回りを外してきたドアなどの板で囲んで平面バッフルにする。完成した即席の豪華なオーディオセットでラジオ・アムステルダム、アムステルダム自由放送というFM局を聞く。これは、アムステルダムのたぶん運河の上だろう船(しかも不法占拠!)から発信している海賊放送局である。レコードの回転数をまちがえたり、DJが誰かと大笑いしてるのがそのまま流れてたりと、結構FEN的ないい加減さである(FENもレコードの針が飛んだまま5分間ぐらい気が付かなかったりするよな)。でも選曲が良いのとDJのオランダ語の響きが気に入っていた。
オランダ語はドイツ語と似ているが、ドイツ語ほど堅くなくって、ころころと流れる様に聞こえる。ちょっと聞いてみる (:RealAudio3.0)好きな言語のひとつだ。
ちょうど、ケネディ大統領の命日だったのだろうか、バート・バカラックの曲に合わせて、当時のニュースキャスターの絶叫や大統領の演説などを交えたSpecial Bulletin:特別番組(RealAudio3.0 4:45)が放送された。
つづく