ボンビー旅行者のたまり場、ドミトリーにおいては各国におけるアルバイト情報が交換される。いわく、イスラエルのキブツと呼ばれる国民農場、シナイ半島での遺跡発掘作業、夏場はギリシャの島々でのオリーブやオレンジの収穫作業、冬場のアイスランドは缶詰工場、ニューヨークはラーメン屋などなど。キブツはイランの工作により壊滅し、ギリシャの果物畑は重労働の割にギャラが安いらしいので却下する。アイスランドなんてのは変わってて興味があるが、冬の寒さの厳しい島に半年間位は閉じ込められそうで(寒いの苦手!)魚クサイかもしれないし、そのうえアイスランド語は世界的にも孤立した変わった言語である。覚えてもあまり役立つ機会はなさそうだしな。
私には、マオウという息子がいる。(アクマくんではない。)もちろん、この旅をしている時点ではまだ彼は存在していなくて、現在の話であるがね。先日息子を連れて渋谷にクレヨンしんちゃんの映画を見に行く途中の新玉川線の電車の中で、アイスランド人の家族連れに会ったのだよ。実は私の実家の父は朝鮮系、母は日本人だが姉は東南アジアにちがいなく、私はフィリピンで義理の姉は香港人だし妻は大阪人、息子と娘は小人(さらに云わせてもらえば、ばあちゃんは老人でじいちゃんは既に死人だ)という国際的な家系なもので、我ら夫婦は大の外人好き。イラン人であろうが茨城人であろうが話しかけずにはいられないので、当然、この遠い島より来た家族と話し込んだ。
アイスランドで有名なのはビョークでしょうかね。彼女の音楽は私も好きです。しかし変わった名前だね。地名もフワムスフィヨルズルとかスティキスホルムルとか、舌を噛みそうな変な発音ばかりだ。んで、アイスランドにおいては、マオウという名前は日本でいう「鈴木さん」以上に多い名前なんだそうな。この旦那さんと息子さんの名前もマオウでした。
今までに出会った人の中で一番へんてこりんな名前は、世界歌謡祭の時に知り合ったフィンランド人の”ヘイキ・サアリッコ”だな。残念ながらそいつは男だったので、いくら平気と云われようとも触りっこする気にはなれなかったがね。さらに話をそらすと、横浜の実家の近くには「とうふや工務店」という柔らかいんだか硬いんだかわからん店もあるぞ。もひとついうと、青山墓地の隣、青山ヴィクタースタジヲの近くには「バンビ精肉店」という肉屋があって、店の看板にはかわいい鹿の絵が描いてあったりする。ブラックだな。
なんの話だったかな。そうだ、ビョークだ。で、イスタンブールに戻った私はアイスランドには行かず、ギリシャを目指した。ギリシャは海運国である。船に乗れれば働きながら交通費も節約できるではないかと考えたのでアール。またバスだぜ。やれやれ。ギリシャのアテネには、バスでもう2日だ。
つづく