講座 「月の満ち欠けの様子と時刻と方角の相互関係を、アタマと身体で理解する方法」

― 第二回 ―

 

じゃ、いよいよ、月の出番だ。

月はその時々で、まんまるの満月になったり、半月になったり細い三日月になったり、いろんな形に見えるね?
何故だろう? これは簡単。身体とアタマを使って、次のようにやってみれば、すぐわかる。

腕を前に伸ばして、大きめのまんまるのボール(白いとなお良し)を手に持つ。
そして、そのままの体勢でぐるぐる廻ってみよう。もちろん、左回りに!

このボールは、もちろんお月さま。
灯りは電気スタンド一個しかないから、ボールのお月さまには、いつも同じ側しか光が当たらない。ちょうど、ボールの電気スタンド側の半分だけが明るく照らされているはずだ。
それを横から見れば、ボールはその片側だけ、灯りの側だけが明るく見える。
光を背にすれば、ボールの明るい側だけが見える。
ぐるぐる回ってみると、その時々で、月の明るい面を、正面や真横から、またナナメやその反対や裏から見ることになって、三日月の形や半月、満月といろいろな形に見えるだろ?

 


ちなみに、ランプ/ボール/自分の目が一直線になるような位置にボールを持つと、ちょうどボール(月)で(太陽)が隠れる。
これが「日食」という現象だね。
SME.jpg
反対に、ランプ/自分/ボールと一直線に並ぶと、今度はボール(月)が自分(地球)の影に入ってしまう。これが「月食」という状態なワケだ。

自転する地球から見た太陽の見かけ上の回り方(見える位置と高さ)の軌道面と、同じく見かけ上の月の回りかたの軌道面は同じではなく、少し斜めにずれて重なっている。
だから、日食や月食のように、ぴったり太陽と月と地球が一直線上に並ぶなんてことは、そう滅多にあることじゃない。日食や月食は稀な現象というわけだ。(それでも1年に2回くらいはチャンスがあるはず。)
真昼の新月は必ず太陽の近くにあるはずだけれど、普段はいつもフラフラと、ちょっと太陽より上か下のずれた位置にいるわけだ。満月も同様に、たいていは太陽と地球とを結んだ線の延長上より上か下にちょっとずれたところにいるから月食とはならずに、太陽の光をまともに浴びてまん丸に光って見えてるわけだ。

 

ただし今回は、月の代わりのボールを手に持ってぐるぐるまわり、いろいろな角度から見てみたわけだけれども、そんなふうに一日のうちに、三日月やら半月やら満月がいろいろ見えるわけはないよね。

 


さきほど、地球は太陽に対して1日に一回廻っていると言った。そして、そうやって廻りながら、さらに地球は太陽の周りを1年かけてまわっていると説明した。
月は月で、さらにそれらと関係なく地球の周りを廻っているのだ。30日弱に一回の割合で。
地球から見れば、太陽も月も動いて(廻って)見えるわけだけれど、その動き方は一日で一回転しちゃう地球の廻り方のほうが断然速い。
だから、とりあえず月と太陽は(一日のうちでは)同じように止まっているとして構わない。 今日のところはね。
だから今、動く(廻る)のは地球(自分)のほうだよ!

 

では、正しい月の見え方は、一日のうちではどんな具合になるのかな?

 


まず始めに、満月が見える晩のことを考えてみよう。

地球である自分が太陽を背にして立つ。
今は真夜中だね。太陽と時刻の関係を思い出そう。

SME.jpg さてここで、もうひとり友達に手伝ってもらって、彼に月の役をやってもらうことにする。 さっきも言ったように、太陽と月の位置を固定しておいて、自分(地球)だけを回転させて一日の様子を観察するためだよ!

この友達には「月」を持ってもらって、太陽を背にして立った自分(地球)の正面に立ってもらう。
太陽、自分、月、の順だ。
この時、自分の影に月が隠れてしまってはまずいね。それは「月食」という状態ということだからね。
月にちゃんと太陽の光が当たるように、友達には、ちょっと月を高くして持ってもらうとしよう。

太陽の明かりを浴びて、月の明るい面が完璧にこちらを向いている。
まんまるの満月だ。

 

よし、じゃあこの状態、月が満月のときの地球での一日の様子を見てみるよ。

自分は地球だ。赤道辺りに頭を北に向けて、仰向けに大の字になって寝そべっているんだと考えよう。
この前の一回目と同じだ。
満月が、寝そべった自分の目の前、つまり正面の空高くに見える。一回目の時と同じく、両手を横に伸ばしたまま、ゆっくり左に回って行くと…。

時刻の説明の時と同じだね。
ただし、いま月は、地球を挟んでいつも太陽と反対側にいるよ。 そうでなければ満月に見えないからね。

夜が更けて、満月は西の空に移動しながらだんだんと高度を下げてゆく。

朝6時。左手の東の地平線から太陽が顔を出すと同時に、右手の西の地平線に満月は沈んでゆく。
さらに廻ってゆくと、昼の12時には太陽が上空高く正面に見え、もっと廻って夕方6時には、今度は西の地平線に太陽が隠れるとともに東から月が見えてくる。
満月がね。

 


地球の自転軸の傾きと、地球の公転によって、季節により太陽の見える高さが変わると言った。
実は、これは話しが逆。太陽の高さが変わるので、「季節」が生まれるんだけどね!
さらに、同じく自転軸の傾きのせいで、日本のように赤道からの緯度が高くなればなるほど(または反対に低くなればなるほど)、見かけ上の太陽の高度が低くなることになり、太陽の光が斜めからさすようになる。
だから、北極や南極は寒いんだね。

 

 

【補足の補足:月の見える高さと傾き】

地球は太陽に対して、一日に一回左まわりに「自転」している。
普通、地球上にいるぼくらには、自分たちが動いているという感覚は無いので、太陽の方が一日に地球のまわりをひとまわりしているように感じているけどね。
その地球は、そうやって廻りながら、さらに一年かけて太陽の周りを一周している(これを「公転」という)。

地球の自転の軸は実は一定の方向へ少し傾いているので(この辺りは画での説明が必要だね!:あ、地球儀を見てごらん。斜めに傾いてるよ!)、そのまま太陽のまわりを地球が移動することで、地球上の一点から見た太陽の見かけ上の高さが変化する。
季節によって太陽の高さが変わって見えるのは、このせいだ。


いつでも太陽は、南の空に来たとき、一番高度が高く見える。これを「南中」というね。
ちなみに北半球の中緯度に位置する日本では、太陽は1年のうちでは、夏至の日の正午、南の空に最も高く「南中」することになる。反対に冬の太陽は高度が低くなる。(だから冬は寒い)
上の図をよく見て、考えてみてくれ。
さて、月に関してはどうなるかな?
実は月の公転軌道面と地球の公転軌道面は、ほぼ等しい(正確には5度ほどずれているだけ)のだ。 つまり、見かけ上の月の動き方は、太陽とほぼ同じだということだ。

ただし、基本的に月を見るのは夜、つまり太陽と反対側にいる月を観測するわけだから、 太陽の場合の南中高度とは逆の関係になって、日本では冬(冬至の頃)に月は最も高い空に「南中」することになるよ。反対に夏の月は低いのだ。
これも上の図版で考えてみてね。


厳密に観測点の緯度のことも含めて考えてしまうと、このようにちょっと複雑でアタマの中だけでは想像しにくくなってしまう。
だから、この講座では、地球も傾いていないししかも赤道から眺めているという具合に、ことを単純化して簡単に考えることにしているよ。

 

ひとつ戻る          次に進む